ある島に、腕の良い釣り師がいた。
朝になると、自分の家族が食べる分だけ魚を釣り、
昼からは家族とゆっくり過ごし、
夜は友達とお酒を飲んで、歌を歌って、
ときどきバーベキューをして楽しむ。
そんな毎日を幸せに暮らしていた。

ある日、島に外国から投資家がやって来た。
そして釣り師にこうアドバイスした。
「そんなに釣りの腕がいいなら、誰かにその技術を教えるべきだよ。」
釣り師が「なんで?」と聞くと、投資家はこう答えた。
「その素晴らしい技術をたくさんの人に教えたら、みんなが魚をたくさん釣れるようになる。そうすれば会社ができて、工場ができて、加工して販売すれば大きなお金が動く。
たくさん儲けて、やがては働かなくても暮らしていけるようになる。朝は好きな釣りをして、昼からは家族と過ごし、夜は友達と焚き火を囲んで歌を歌って、楽しく暮らせるようになるよ。」
すると釣り師はこう言った。
「それなら、もう今やってるよ。」
この話はよく紹介されている寓話のひとつで、
「働きすぎず、家族や仲間との時間を大切にしよう」
というメッセージが込められている。
けれど、ワタクシいっちゃんは、ずっとこの話に少し違和感を感じていた。
最近、その理由がわかってきた。
たしかに釣り師自身は幸せだ。
けれど、もしその人が自分の技術を他の人に教えていたら――
その人のまわりの誰かも、家族も、きっともっと幸せになれたんじゃないか。
誰かに技術を伝えることで、
その人が魚を釣れるようになり、家族の食卓が豊かになる。
もっとたくさんの魚を、多くの人に届けられたら、
もっと多くの人を喜ばせることができる。
「自分が幸せならそれでいい」という考え方には、
他の人の幸せを自分の喜びにするチャンスを、放棄してしまっているような気がする。
これは釣り師の話だけれど、
理容師にもまったく同じことが言える。
ワタクシいっちゃんの夫・狐嶋師匠も、
お客さんから「マスターが死んだら俺の散髪どうしたらええねん。俺より先に死なんといてや」なんて言ってもらえるような、頼りにされる存在だった。
けれど、師匠も病気になったり、やがて命が尽きる日がくる。
そのとき、もし技術を誰にも伝えていなければ、
その素晴らしい技術も一緒に世の中から消えてしまう。
それは、あかん。
そう思って、師匠は若いスタッフに技術を教え、
大切なお客さんをそのスタッフに託していくことを、元気なうちから始めていた。
本当なら、自分を指名してくれていたお客さんを他のスタッフに任せるのは、寂しいことかもしれない。
けれど今は、若いスタッフがお客さんの髪をカットしたり、パーマをかけたりしながら、楽しそうに会話している姿を見ると、
「よかったなあ」って思う。
その関係性を、私は**「真の指名客」**と呼んでいる。
けれど、若いスタッフもいずれは年を重ねる。
だからこそ、そのスタッフがまた次の世代に、
技術と“この考え方”を伝えていくことが大切になる。
そうやって、バトンのように思いをつなぎ、
技術が継承されていくこと。
それが、「インフィニィト(=無限)」という名前に込めた想いでもある。
1195日目。
Instagramリールで毎晩19時に投稿しているので観て下さい。
理容師を育てるオバチャン💈コジマ@神戸
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